理事長挨拶

更新日時:2020年6月10日
日本骨髄腫学会理事長
安倍 正博
徳島大学大学院 医歯薬学研究部 血液・内分泌代謝内科学分野 教授

 令和2年5月、日本骨髄腫学会理事長を拝命致しました。本学会は、多発性骨髄腫およびその類縁疾患に対する診療・治療の向上とそれらの病因と病態の解明のために、本学会の前身である日本骨髄腫研究会が1976年に発足して以来、わが国を牽引して参りました。本会の歴史の重みを感じつつ、本邦だけでなくアジア、世界の多発性骨髄腫およびその類縁疾患の診療・治療成績の向上を目標に、本学会のさらなる発展に向け全力を尽くす所存です。

 近年のゲノム解析などの進歩により、個別化治療に繋がるような骨髄腫の分子病態の解明が進み、そして新規薬が次々と臨床応用され、治療パラダイムが大きく変化しました。とりわけこれまでの治療の弱点であった腫瘍免疫の賦活に繋がる免疫療法に期待が大きく膨らみ、骨髄腫の治療パラダイムが、今後もさらに大きく変化しようとしています。本学会はこのような変化に対応し本邦の骨髄腫診療を向上させるために、「多発性骨髄腫の診療指針」をはじめとした出版物の刊行や、2019 年から「骨髄腫セミナー」を開催しています。今後さらに、学会として診療・教育・研究活動の支援と啓蒙活動を多面的に行いたいと思います。

 本学会の大きな特徴に、実地診療に根ざした活動という、日本骨髄腫研究会の時代からのよき伝統があると思います。このよき伝統を継承しつつ、本学会が今後さらに大きく飛躍するためには、全国規模での学会員の横のネットワークの構築と若手リーダーの育成が喫緊の課題と実感しております。本学会として、学術集会での若手によるシンポジウムや教育セミナーなどを企画し、また若手が主導する研究を支援するなど、若手が主体的に活躍する場を提供しますので、多くの若手がリーダーとして活躍することを期待しています。

 また、本学会のあり方として、海外との連携、他の学術団体と連携・融合した基礎、治療研究の推進、男女共同参画そして患者さんを中心とした社会との繋がりが今後益々大切になると思います。良い意見は取り入れ、批判には誠実に対応し、本学会の機能を最大限に引き出し発展するために、柔軟性のある“開かれた学会” という視点で取り組みたいと思います。

 このような点に真摯に取り組み、本学会の発展のために尽力する所存です。会員の皆様におかれましては、今後とも一層の御支援とともに御指導御鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。