再発または難治性多発性骨髄腫に対するdaratumumab(ダラザレックス®)の使用について

 Daratumumab (DARA)は骨髄腫細胞に高発現しているCD38を標的とした新規モノクローナル抗体医薬であり,米国においては2015年に再発または難治性多発性骨髄腫に対する薬剤として承認されている。

 再発難治例を対象としたDARAの第I/II相試験では,単独療法として8 mg/kgと16 mg/kgが投与され,PR以上の奏効割合は,それぞれ10%と36% (CR 5%,VGPR 5%を含む)であった1)。Grade 3以上の主な有害事象は肺炎と血小板減少であった。Infusion reactionはそれぞれ67%と71%と高頻度であったが,大部分はGrade 1, 2で主に初回投与時に認められた。

 DARAの第III相試験では16 mg/kgが用いられ,lenalidomide (LEN) + dexamethasone (DEX)療法やbortezomib (BOR) + DEX療法との併用療法が検討された。DARA + LEN + DEX療法とLEN + DEX療法との比較試験(POLLUX)では,1年後のPFSはDARA群が83.2%でコントロール群の60.1%に対し有意に優れていた(p<0.001)2。PR以上の奏効割合は92.9% vs 76.4% (p<0.001), CR以上の奏効割合は43.2% vs 19.2% (p<0.001)とDARA群における深い奏効が認められた。Grade 3以上の主な有害事象は好中球減少51.9% vs 37.0%,血小板減少12.7% vs 13.5%,貧血12.4% vs 19.6%であった。DARAによるinfusion reactionは47.7%に認められたが,大部分はGrade 1, 2であった。DARA + BOR + DEX療法とBOR + DEX療法との比較試験(CASTOR)では,1年後のPFSはDARA群が60.7%でコントロール群の26.9%に対し有意に優れていた(p<0.001) 3。PR以上の奏効割合は82.9% vs 63.2% (p<0.001),CR以上の奏効割合は19.2% vs 9.0% (p=0.001)とDARA群における優位性が示された。Grade 3以上の主な有害事象は血小板減少45.3% vs 32.9%,貧血14.4% vs 16.0%,好中球減少12.8% vs 4.2%であった。DARAによるinfusion reactionは45.3%に認められたが,Grade 3は8.6%と少数であった。

 このように,DARAは3剤療法として再発または難治性多発性骨髄腫に有効性の高い薬剤であり,National Comprehensive Cancer Network (NCCN)ガイドライン(2018 version 3)では既治療例に対するサルベージ療法としてDARA + LEN + DEX療法およびDARA + BOR + DEX療法が推奨されている(カテゴリー1)。わが国ではDARAは2017年11月に再発または難治性多発性骨髄腫を対象にDARA + LEN + DEX療法またはDARA + BOR + DEX療法として承認されており,再発難治例に対するこれらのレジメンは推奨される(推奨度A,エビデンスレベルIb)。なお,CD38は赤血球膜表面にも低発現していることから,DARAの投与を受けた患者では血清中のDARAが輸血検査用の赤血球と結合し,交差適合試験が偽陽性となることがあるため,投与前に輸血検査を実施するなどの対策が必要である4


文献

1.Lokhorst HM, et al: Targeting CD38 with daratumumab monotherapy in multiple myeloma. N Engl J Med 373:1207-1219, 2015
2.Dimopoulos MA, et al: Daratumumab, Lenalidomide, and Dexamethasone for Multiple Myeloma. N Engl J Med 375:1319-1331, 2016
3.Palumbo A, et al: Daratumumab, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma. N Engl J Med 375:754-766, 2016
4.van de Donk NW, et al: Clinical efficacy and management of monoclonal antibodies targeting CD38 and SLAMF7 in multiple myeloma. Blood 127:681-695, 2016


再発または難治性多発性骨髄腫に対するixazomib (ニンラーロ®)の使用について

 Ixazomibは経口の新規プロテアソーム阻害剤であり,米国においては2015年に再発または難治性多発性骨髄腫に対する薬剤として承認されている。

 Ixazomibはlenalidomide, dexamethasoneとの併用において相乗効果をもたらすことから1),未治療例を対象とした ixazomib (第1, 8, 15日) + lenalidomide (25 mg/日, 第1-21日) + dexamethasone (40 mg/日, 第1, 8, 15, 22日) の3剤療法の第I/II相試験が実施され,PR以上の奏効は92%,VGPR以上の奏効は58%であった2)

 再発・難治例を対象としたixazomib (4 mg/body) + lenalidomide + dexamethasone療法はプラセボ + lenalidomide + dexamethasone群との第III相二重盲検比較試験として実施され(TOURMALINE-MM1),無増悪生存期間の中央値は20.6ヵ月 vs 14.7ヵ月(p=0.01),PR以上の奏効率は78% vs 72% (p=0.04),CR率は12% vs 7% (p=0.02)とixazomib群が有意に優れていた3)。主な有害事象としてはグレード3以上では好中球減少(23% vs 24%)と血小板減少(19% vs 9%),全グレードでは皮疹(36% vs 23%)と末梢神経障害(27% vs 22%)であった。

 わが国における再発・難治例を対象とした第I相試験では,ixazomib (4 mg/body)単剤療法と3剤療法が実施された4)。薬物動態ではlenalidomideとdexamethasoneの併用による影響は少なく,最高血中濃度到達時間は1.08-1.83時間,半減期は5.2-5.7日であった。なお,血中濃度は食事の影響を受けるため,食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けることが肝要である。

 中等度以上の肝障害を有する固形腫瘍患者におけるixazomibの薬物動態の検討では,非結合型AUC0-lastは正常者と比較し23-32%高値であったことから,3 mg/bodyからの開始が推奨されている5)。また,高度の腎障害(クレアチニン・クリアランス ‹30 ml/min)を有する例や血液透析患者においては,非結合型AUC0-lastは腎機能が正常な患者と比し38%高値であり,3 mg/bodyが推奨されている6)。Ixazomibは血液透析では除去されないことから,透析と関係なく投与が可能である6)

 Ixazomib + lenalidomide + dexamethasone療法はすべて経口剤からなる利便性の高いレジメンであり,National Comprehensive Cancer Network (NCCN) ガイドライン(2017 version 3)では既治療の多発性骨髄腫に対するサルベージ療法として推奨されており(カテゴリー1),移植適応および移植非適応の未治療多発性骨髄腫に対する初期治療(代替レジメン)としても記載されている7)

 わが国ではixazomibは2017年3月に再発または難治性の多発性骨髄腫を対象にlenalidomideおよびdexamethasoneとの3剤療法として承認を得ており,再発・難治性多発性骨髄腫に対する本レジメンは推奨される(推奨度A,エビデンスレベルIb)。


文献

1)Chauhan D, et al: In vitro and in vivo selective antitumor activity of a novel orally bioavailable proteasome inhibitor MLN9708 against multiple myeloma cells. Clin Cancer Res 17:5311-5321, 2011
2)Kumar SK, et al: Safety and tolerability of ixazomib, an oral proteasome inhibitor, in combination with lenalidomide and dexamethasone in patients with previously untreated multiple myeloma: an open-label phase 1/2 study. Lancet Oncol 15:1503-1512, 2014
3)Moreau P, et al: Oral Ixazomib, Lenalidomide, and Dexamethasone for Multiple Myeloma. N Engl J Med 374:1621-1634, 2016
4)Suzuki K, et al: Phase 1 study of ixazomib alone or combined with lenalidomide-dexamethasone in Japanese patients with relapsed/refractory multiple myeloma. Int J Hematol 105:445-452, 2017
5)Gupta N, et al: Pharmacokinetics of ixazomib, an oral proteasome inhibitor, in solid tumour patients with moderate or severe hepatic impairment. Br J Clin Pharmacol 82:728-738, 2016
6)Gupta N, et al: A pharmacokinetics and safety phase 1/1b study of oral ixazomib in patients with multiple myeloma and severe renal impairment or end-stage renal disease requiring haemodialysis. Br J Haematol 174:748-759, 2016
7)Kumar SK, et al: Multiple Myeloma, Version 3.2017, NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. J Natl Compr Canc Netw 15:230-269, 2017


自家末梢血幹細胞採取におけるPlerixafor(モゾビル®)の使用について

 Plerixaforは可逆性のCXCR4のアンタゴニストであり、CXCR4とSDF-1の結合を阻害し幹細胞を骨髄から末梢血へ動員する作用をもつ。米国では2008年に非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫における幹細胞動員にG-CSFと併用することが承認されている。

 PlerixaforはG-CSFと併用した場合、その効果は投与後4-9時間でピークを迎え、長時間持続することが報告されている1)

 PlerixaforとG-CSFで動員された細胞はG-CSF単独で動員された場合と比較し、増殖周期の細胞、CD34+CD38-の未熟な前駆細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、NK細胞を多く含み、造血幹細胞におけるVLA-4とCXCR4の発現亢進と細胞接着、細胞運動性、細胞周期、抗アポトーシスに関する遺伝子発現の亢進が報告されている2, 3)。これらの特徴はG-CSF単独で動員された幹細胞に比べてPlerixaforで動員された幹細胞は骨髄再生と免疫再構築能が高いことを示唆している。

 Plerixaforの第2相試験では、G-CSFとの併用によりG-CSF単独より幹細胞動員(≧5 x 106 CD34陽性細胞/kg)成功率が高く、アフェレーシス回数の減少がみられた4)

 多発性骨髄腫302例を対象とした第3相試験では、4回以下のアフェレーシスで2 x 106/kg以上のCD34陽性細胞を採取出来た患者の割合はPlerixafor + G-CSF群で95%、placebo + G-CSF群で88%であり、Plerixafor群で有意に高かった(p=0.031)5)。また、2回以下のアフェレーシスで6 x 106/kg以上のCD34陽性細胞を採取出来た患者の割合はPlerixafor + G-CSF群で72%、placebo + G-CSF群で34%であり、Plerixafor群で有意に高かった(p ‹ 0.001)。Plerixafor投与群で高頻度にみられた有害事象は消化器症状(下痢、悪心、嘔吐、腹部膨満感)、疲労感、注射部位の反応であり、本剤投与による死亡例の報告はなかった。

 以上の結果より、American Society for Blood and Marrow Transplantationによるconsensus guideline and recommendationでは、多発性骨髄腫ではG-CSF 10-16μg/kg/dayによる動員は、前治療1回の症例、melphalan未使用あるいはlenalidomide 4サイクル未満の症例に限定され、上記以外の症例では末梢血CD34陽性細胞のモニタリングとPlerixaforの先制性的使用で多くの症例で幹細胞の採取が成功するとしている6)

 Plerixaforはわが国では2017年2月,自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員促進の目的で,G-CSF製剤との併用投与が承認されており,多発性骨髄腫患者においても動員が不十分な例には本剤の使用が推奨される(推奨度A,エビデンスレベルIb)。


文献

1.Harvey RD, et al. Temporal changes in plerixafor administration and hematopoietic stem cell mobilization efficacy: results of a prospective clinical trial in multiple myeloma. Biol Blood Marrow Transplant. 19:1393-1395, 2013.
2.Larochelle A, et al. AMD3100 mobilizes hematopoietic stem cells with long-term repopulating capacity in nonhuman primates. Blood 107:3772-3778, 2006.
3.Fruehauf S, et al. A combination of granulocytecolony- stimulating factor (G-CSF) and plerixafor mobilizes more primitive peripheral blood progenitor cells than G-CSF alone: results of a European Phase II study. Cytotherapy 11:992-1001, 2009.
4.Flomenberg N, et al. The use of AMD3100 plus G-CSF for autologous hematopoietic progenitor cell mobilization is superior to G-CSF alone. Blood 106:1867–1874, 2005.
5.DiPersio JF, et al. Plerixafor and G-CSF versus placebo and G-CSF to mobilize hematopoietic stem cells for autologous stem cell transplantation in patients with multiple myeloma. Blood 113:5720–5726, 2009.
6.Giralt S, et al. Optimizing autologous stem cell mobilization strategies to improve patient outcomes: consensus guidelines and recommendations. Biol Blood Marrow Transplant 20:295-308, 2014.

多発性骨髄腫の診療指針 第4版 が 9月4日に刊行されました。

多発性骨髄腫診療の指針 第4版

日本で初めて出版された骨髄腫の診療ガイドライン

日本骨髄腫学会 編  B5 176頁

文光堂  定価 3,200円(税別)

ISBN 978-4-8306- 2040-9


 多発性骨髄腫の診療指針,第4版が上梓された.本診療指針の第1版は2004(平成16)年6月に,第2版は2008(平成20)年11月に、第3版は2012(平成24)年9月に刊行され,多くの関係者に評価された.その結果,販売数は2016(平成24)年6月の時点で,第1版7,700部,第2版は6,840部、第3版は8,280部に達した.


【改訂の経緯】

 第1版では,それまで多くの基準が用いられていた多発性骨髄腫の診断基準として、2003年にInternational Myeloma Working Group(IMWG)が提唱した基準を推奨した。この後、IMWGの診断基準は国際的な標準として広まった。また、わが国の骨髄腫の臨床のエビデンスとして,日本骨髄腫研究会(当時)の関連施設1,380症例の臨床成績を提示し,このデータを含めIMWGにより提案されたアルブミン値とβ2ミクログロブリン値に基づくInternational Staging Systemを紹介した.治療に関しては、治療開始時期を明示し,65歳以下の初期治療では自家骨髄移植を伴う大量化学療法(HDT–ASCT)を第一選択として推奨し,わが国の保険診療で可能な薬剤による骨髄腫の標準的治療のアルゴリズムを提唱し,さらに補助療法の重要性を示した.

 第2版では,第1版以後の急速な骨髄腫研究の進歩に関する追加記述とともに,治療法について,推奨の程度とエビデンスレベルを明示した.また,当時,欧米では広く使われるようになっていたがわが国では保険診療で初回治療薬としては認められなかった新規薬剤のサリドマイド(THAL),ボルテゾミブ(BOR),レナリドミド(LEN)に関する欧米の成績と投与法を詳述した.さらに,項目の冒頭に要点または推奨を示して内容を分かりやすくし、理解すべき用語は用語解説として明示した.

 第3版の編集方針は,1)第2版刊行以後さらに目覚ましく発展した骨髄腫診療の進歩を可能な限り網羅すること,2)新たに必須の検査となったfree light chainなどを理解しやすく詳述すること,3)新たにコラム欄を設けminimal residual disease,risk-adapted strategyや2次がんなどの最近のトピックスについて説明すること,4)最新の文献を引用すること,5)できるだけこの診療指針1冊で必要な内容が分かる自己完結を目指すこと、の5点であった。
 また、2012年での標準的治療アルゴリズムを提案し、POEMS症候群とALアミロイドーシスについては類縁疾患として分けて詳述した。

【第4版の特徴】

 今回の第4版の基本的な構成と記述様式は第3版と同じである。

 編集方針と内容は、1)第3版以降の骨髄腫に関する新たな知見を可能な限り網羅する、2)IMWGの診断基準の改正や新規薬剤導入後の治療法の進歩を詳述する、3)THAL・BOR・LEN以後の新たな新薬を概説する、4)残存病変の評価、マクログロブリネミア、monoclonal gammopathy of renal significance (MGR)を増補する、5)2013年に公表された「日本血液学会造血器腫瘍診療ガイドライン」との相補性と整合性を高めること、の5点である。また、巻末に、我が国の骨髄腫に関する臨床基本データとして、日本骨髄腫学会が2013年に行った2001年―2011年の骨髄腫学会関連施設の2,234例の臨床所見と成績を1990年―2000年までの1,380例のデータと比較し、まとめた。

 今回の指針で論議となったのは、IMWG2014診断基準改定で新たに多発性骨髄腫とされた、従来の(ウルトラ)ハイリスクSMMに対する治療開始時期の判断であった。編集委員の中にもいろいろな意見があり、3回のアンケートを実施するなど、編集委員間の討議を重ね第41回学術集会(於徳島)でも議論した。現時点でのとりまとめは指針に記したが、今後、エビデンスの蓄積によりこのまとめは見直される可能性がある。この点も含め、本指針の修正や訂正等は、適宜、日本骨髄腫学会のホームページ゙に掲載する方針である。

【本書の活用法】

 本書は,現時点での骨髄腫診療の最新の知見と考え方を客観的かつ論理的に整理して提示しているが,すべての臨床の場面を包含するものではない.それぞれの局面での判断は担当医に委ねられている。また,骨髄腫診療の進歩が急速な現代にあっては,臨床成績がエビデンスとなり指針に取り入れられるまでには時間を要するので,骨髄腫診療の進歩の情報には常に注意を払うことをお願いしたい.


 なお、本診療指針は、これまで日本骨髄腫研究会による編集であったが、平成24年4月に研究会が日本骨髄腫学会へ発展的に移行したため、今回から日本骨髄腫学会編となった。


平成28年8月

「多発性骨髄腫の診療指針,第4版」編集委員会